待合室の一角にあって院長がオープンビバリウムと名付けた大型のアクアテラリウムです。コロンビアレッドフィンやラミノーズテトラなど南米原産の淡水魚が数種とニューギニア島などに棲むイエアメガエル、朝鮮半島に棲むチョウセンスズガエルが生息しています。カエル達は自然繁殖しているデュビアやワラジムシなどを適当に食べているようですが、大喰らいなので時々は別に自家繁殖させているコオロギも与えます。全くのオープンなのにカエル達がどこにも逃げて行かないのは何故なのでしょう。

 W130×D45×H50cmのガラス水槽上部の木枠の内側に針金で固定した岩や流木を配置。隙間にはケト土などを盛ってコケ張りし様々な熱帯植物を植え込みました。植物に必要な水分や養分は、水槽内からモーターで汲み揚げた水を陸地部分にパイプで引き、植物が根張りする岩の隙間などから湧き水として滴り落ちるようにしてあるのでその水が土中にしみ込み自然に供給されます。一部の植物は水中にも根を下ろしています。

 植物に囲まれた木枠の中央部分にはアクアリウムの水面が池のように顔を覗かせており、そこからは水面下に設置された2台のミストメーカーによって常時霧が発生し、陸地の部分は熱帯雨林の林床のような高湿度な環境が保たれています。またアクアリウムの水温は27℃で維持されているため、そこからの放熱によって植物が繁茂している辺りの気温は冬場に室内の空調を切っても15℃を下回ることはありません。

 アクアリウム部分はソイル系の底床に水草を植え流木や岩を配したレイアウト水槽になっていますが、水槽内は日陰になるため植裁はクリプトコリネやミクロソラムなどの陰性水草だけです。照明には150Wのメタルハライドランプ2基と20Wの蛍光管4本を使用し、点灯時間はタイマーによってコントロール。水槽内の水は流量が毎時1,000リットルの外部フィルター2台を用いた循環型微生物濾過方式によって浄化しています。

 水槽の後ろの壁にはバージンコルク片を貼ってツル性植物を這わせていますが、それが梁や天井まで伸びて吊り下げられた照明ボックスの上部を覆っています。その辺り一帯がイエアメガエルの生活圏になっていて、日中はどこかに潜んでいますが夜間部屋が暗くなると照明ボックスの上の定位置に揃って現れ、エサをもらえた時は即刻、もらえなければそのまま数時間居座った後に寝床に帰るという生活を送っています。

 その中のケロいち(一番左の写真)だけは懲りない性格。散歩でもあるまいに院内のいたるところに遠出しては猫達に見つかり、お手玉遊びの相手をさせられることがしばしば。連中に小突かれると普段の「グゥワグゥワグゥワ」というメイティングコールとは全く違う「キリキリキリキリ」というけたたましい警戒音を発しつつ、ピョンピョンペタペタ驚くべき速さでビバリウムエリアに逃げ帰ります。

 なお院長に対してはどのカエルも、掴まれようが小突かれようがそんな反応は示さないのが不思議です。どこで猫(多分捕食者として認識)と人間を識別しているのか、彼らの危機管理マニュアルがあったら是非見てみたい。当院の猫達はカエルなんぞ食べたことないけど、院長はかって台湾でカエル料理をうまいうまいと言って貪り食った極悪人でカエル社会から見ればいわば賞金首。あんたら警戒する相手を間違えとらんか。

 



 カウンセリング室に設置された大型アクアリウムです。W120×D45×H45cmのガラス水槽の底床にはソイル系とサンド系を組み合わせ、前景、中景、後景に配した十数種類の水草と大きめの流木を使ってレイアウトを組んであります。水槽内の水は流量が毎時1,200リットルの外部フィルター1台を用いた循環型微生物濾過方式によって浄化しており、水草の育成のため炭酸ガスを連続添加しています。

 魚はゴールデンバルブやチェリーバルブ、ラスボラエスペイなど東南アジア原産の淡水魚が数種と、ほかにミナミヌマエビなどの甲殻類やヒメタニシなどの貝類が多数生息しています。照明には36Wのツイン蛍光灯4基と20Wの蛍光管4本を使用。定期的に足し水をするほかは不精で水換えもフィルター掃除もほとんどしないのにエコシステムが完璧に機能しており、常にクリスタルウォーターの状態が維持され過剰な苔の発生もみられません。魚達も婚姻色も鮮やかにとても元気です。



 玄関に設置された大型のビバリウム。W120×D45×H45cmのガラス水槽の上にアクリル板を加工して作った同じサイズの箱を逆さにして重ねた手作り品です。上部アクリル部分の前面には、メンテナンスのための引き違いのガラス扉を付けました。またビバリウム内が蒸れるのを防ぐと共に微風のような空気の流れを作り、植物の葉面からの二酸化炭素の取込みが起こり易いようにすることでその生育を促すため、左右の側面には吸気用と排気用の小型ファンを取り付けました。それぞれのファンは、ビバリウム内の気温が22℃を上回っている時だけ作動するようサーモスタットと連動しています。

 ガラス水槽部分は、山砂にビバリウム内へのカルシウムの供給源となるサンゴ砂を適量混ぜたものを底床にして、その上に大きめの岩を用いて石組みを施しただけの水草もアヌビアスだけというシンプルなレイアウトのアクアリウムになっています。石組みの上には何本もの流木を渡し隙間にはヤシ殻ブロックやミズゴケなどを詰めて人工地盤を作りました。水面の大半はその人工地盤で覆われていますが、水槽の前面部分だけは開放水面にして自然の水辺を再現してあります。水槽内の水は、流量が毎時1,500リットルの外部フィルター1台を用いた循環型微生物濾過方式により浄化しています。

 

 

 

 

 人工地盤には腐葉土を厚く盛って陸地とし、そこに野外で採集したオーク、クヌギ、ナラなどの落葉を重ねて敷きつめたり朽木を埋もれさせたりしています。植え込んである十数種類の熱帯性植物も蔓や枝葉を伸ばして繁茂し、陸地や水中にも根を張り巡らすなどして林床を支えています。陸地の後の壁面はバージンコルク片やヤシパネルを張り付けた上にコケ張りして植物を着生させてあり、最上部に設置したシャワーパイプから外部フィルターを通ってきた水槽内の循環水がその壁面を伝って滴り落ちるようになっています。

 陸地部分は入り組んだ流木によって複雑な地形が形作られ、低地には水槽内の水位を上げると小さな湿地や水たまりも出現します。水槽内からモーターで水を汲み揚げ陸地部分に小さな流れも作ってあります。また水面下に設置されたミストメーカーによって発生した霧が、それ用に設置した送風ファンによって水面と人工地盤との間を流れ、流木の隙間などから地表部分に常時湧き上がるようにもなっています。その他、園芸用の電動噴霧器を改造利用し、天井部分に設置した噴霧ノズルからは、タイマーによって夜間数時間毎に水が吹き出すようになっており、ビバリウム内に人工的な降雨をもたらします。

 アクアリウム部分の水温は27〜28℃に設定され、その濾過水がテラリウム全体を潤しながら循環しているためビバリウム内の気温は冬場でも22℃を下回ることはなく、湿度も場所によって若干違いはありますが昼間で70〜80%、夜間で80〜90%に維持されています。照明には20Wのフルスペクトル蛍光管12本を使用し、点灯時間はタイマーによってコントロール。ただし蛍光管から照射される紫外線のうちUVBについては、天井部分のアクリル板にほとんど吸収されてしまっていると思われます。

 ビバリウム内には、地上棲のカエルとしてマダラヤドクガエル2種、セマダラヤドクガエル、キスジフキヤガエル、ゴールデンマンテラ、ブロンズマンテラ、グリーンクライミングマンテラ、ブルーレッグマンテラ、ペインティッドマンテラ、スプレンディッドマンテラ(以上昼行性)、マラヤウデナガガエル(夜行性)。樹上棲のカエルとしてアカメアマガエル、フチドリアマガエル、シロテンヒシメクサガエル(以上夜行性)。水上棲のカエルとしてアジアウキガエル(夜行性)といった、中南米、東南アジア、マダガスカル島原産の両生類が棲息しています。

 それらのエサとなる土壌生物なども多数棲息しており、陸棲の甲殻類としては数種のワラジムシ、ヒメフナムシ、ヨコエビ。昆虫類としては数種のチャタテムシ、同キノコバエ、同トビムシ、ショウジョウバエ、コクヌストモドキ、カシノシマメイガ、グリーンバナナローチ、コヌカアリ、アミメアリ。ほかにもササラダニ、ジムカデ、ヒメヤスデ、小型のマイマイ、キセルガイ、フトミミズなどが見られます。人為的に投入した種もありますが多くは卵や幼虫などが落葉などについて持ち込まれたらしく、いずれも一定数の個体が年間を通じて見られることから自然繁殖していることは明らかです。

 そのうちのコヌカアリについては、たまたま樹上のコケを剥がした際に働きアリが慌てて卵や蛹や幼虫を運び出すのを見てそこに巣があったことを知ったのですが、結構大きなコロニーが作られていてエサを探して枝の上などを動き回る働きアリをよく見かけます。またアミメアリの場合は、元々が巣を作らずにあちこちキャンプ生活しながら働きアリだけで単為生殖する蟻として知られていますが、ビバリウム内でも卵や蛹や幼虫をくわえた一団が新しいキャンプ地へ集団移動する本種特有の行列を時々見かけるので、これも働きアリだけの特徴的なコロニーが存在しているのは確かです。

 そういった多種多様な生物の存在によってカエル達のエサはビバリウム内で自然供給されるため、カエル飼育の定番ともいえるショウジョウバエやコオロギなどの定期的給餌は行っていません。代わりにそれらエサとなる生物のエサとなる落葉、酵母菌や麹菌の大豆培養物、フスマ、クロレラ、昆虫ゼリー、バナナやキウイなどの果実、蜂蜜などを定期的に投入することでその増殖が促されます。高温多湿のため当然それらのエサには腐食菌のカビも多く発生しますがツボカビと違いカエル達に悪影響を及ぼすことはなく、常時見られるキノコ類と同様土壌の生成に役立っています。また、それらの栄養分に富んだエサを食べた生物をカエル達が食べることによるローディング効果も期待できます。

 ビバリウム内には、流木や朽木の隙間、落葉の下、生い茂った植物の蔭や入り組んだ根の周りなどカエルが身を隠せるハイディングスペースはいくらでもあり、またそういった場所にはエサも豊富にあるとみえ滅多に姿を見せません。たまに見かけると各個体とも健康そうで野生動物特有の引き締まった体型をしているので、少なくともエサ切れやストレスの心配はなさそうです。これだけカエルの種類が多く個体密度が高いにもかかわらず、自然の林床に近い棲息環境のお陰でお互いが不自然に遭遇する機会が少なくて済んでいることが、個体間の縄張り争いやストレスを生じ難くさせているものと思われます。

 このような閉鎖的な限られた空間であってもエコシステムが完璧に機能さえしていれば、頻繁に手を加えずとも多種多様な生物が生存してゆける環境を長期に亘って維持することは可能です。熱帯雨林に棲むカエル達のためのこのビバリウムがそれを証明してくれましたが、現地の熱帯雨林ではそういう生命の営みが何千年何万年と続けられてきたんですよねえ。


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