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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.09:家の外に出たがって暴れる。


★★相談内容★★

このたび、愛猫のことがとても心配になり、そんなときこのホームページを知り、メールさせていただきました。私の猫は今年の9月で7歳になったメス猫(避妊手術、ワクチン済み・シャムの血が入っていると思われる雑種)です。以前は完全室内飼いだったのですが、5年くらい前から外に出たがるようになり、それからは週に2回ほどは出していました。ほんとは毎日出たがって暴れていたのですが・・・。

そんなとき1ヶ月前ぐらい前から元気がなく目の瞬膜が常に少し見えている状態になってしまって、相変わらず外には出たくて暴れていましたが、病気なのかと思い、病院に連れて行きました。そこで軽い結膜炎と診断され、目薬を処方され、今後は猫エイズの危険性もあるとのことから完全室内飼いを言われました。(ちなみにそのとき検査をして猫エイズは陰性でした)けれど、目薬の効果は全く見られず相変わらず瞬膜は出ているし、病院に行ってからは一度も外に出していないので、ストレスがピークに達しているのか、頻繁にトイレ以外のところでおしっこやうんちをしてしまうようになってしまいました。そしていろんなところを引っかいたり、大きな声で泣き叫ぶのは以前に増して激しくなってしまいました。

どうしたら一番猫にとってよい方法なのか、外へは少しなら出してあげたほうがよいのかわかりません。また、近々引っ越す予定なのですが、今の状態でさえどうしたらよいのかわからないのに、こんな状態の猫を引越しさせても大丈夫なのでしょうか?とにかく悩んでいます。それから、キャリーバッグに入るのをすごく嫌がり、中で暴れてしまうので、引越しのときは眠らせたりしたほうがよいのか、またそういう薬は病院でもらうのでしょうか?とてもまとまりのない長い文章になってしまって申し訳ありませんが、回答お待ちしてます。どうぞよろしくお願いします。



★★助言内容★★

完全室内飼いだった猫を何かのきっかけで屋外に出してしまい、それが何度か続いたりするとそのあとに往々にして今回のようなことが起こることがあります。ただし、もともとが臆病な性格の個体であれば偶然屋外に出てしまったとしても、恐怖を味わっただけで二度と外に出たいなどとは思わないでしょうから多くは問題となりません。それに対し、好奇心旺盛な個体の場合はその体験が病みつきになり、外出への欲求が高まってしまうことがしばしばです。それは何度かの外出の機会を得て、今まで家の中だけに限定されていた猫の生活圏が家の外にまで拡大してしまった、言いかえれば家の外も自分の生活圏であるというように猫が認識してしまったということです。

本来猫という動物は、住処となる巣穴を中心としてその周囲に狩猟、排泄、休息など特別な目的に使われる生活領域や、ほかの猫の侵入を積極的に排除しようとするテリトリー(縄張り)領域を含む一定の生活圏(ホームレンジ)を確保し、そこに定住して単独生活していた動物です。現在のイエネコ達もそういった習性は何ら変わってはおらず、猫は家につくという経験則でも示されているとおり、そういった自らの生活圏に対しては非常に強い執着心をもっていますが、はじめから外には出さず家の中だけで暮らすようにしておけば、広かろうと狭かろうとそこだけを生活圏として何の問題もなく生活できます。

ところが、今回のように一旦家の内外に生活圏が構築されてしまうと、猫にとってみればそこがすべて日常の行動領域となるわけですから、家の中だろうが外だろうが関係なく行動しようとします。外で事故に遭ったり病気をうつされるのが心配だからといった飼い主側の思惑などは猫に理解されるはずもなく、家から出ようとして出られず自分の生活圏内で自由に行動できない(猫には拘束されたのと同じような状況であって、あちこち引っ掻いたり大声で鳴いたりするのはそのためです)となれば強いストレスが生じるのは至極当然の結果といえます。不適切な排泄はおそらくはそのストレスによる情動反応でしょう。

相談者においては近々引っ越しの予定があるとのことですが、幸いにしてこの問題の解決にあたってはしばしばその引っ越しが有効となる場合があります。というのは、引っ越しによって全く新しい環境に移された場合、猫にとってみれば従来の生活圏が強制的かつ完全にリセットされてしまうためで、引っ越し先でははじめから一切外に出さないようにすれば、新しい環境への順応とともにその家の中だけが新たな生活圏として再構築されることになり、今までのように外に出る意味はなくなるからです。

ただし、引っ越し自体が生活圏に強い執着をもって生活している猫に対して大きな影響を与えることは否めず、それを最小限にとどめるためには、猫が新しい場所の音や匂いに慣れて(聴覚あるいは嗅覚順応といいます)安心感を抱くようになるまで、一週間程度は食物や水、トイレを置いたなるべく狭い場所に閉じ込めておいた方がいいでしょう。その後、閉じ込めておいた部屋のドアなどを少しだけ開けておき、猫が自分のペースで周囲の様子を探りながら徐々に生活圏を広げて行けるようにしてあげることです。引っ越し時、キャリーバッグに入れるのが容易でない場合は、トランキライザーという向精神薬を動物病院で処方してもらって事前に服用させるといいでしょう。薬のもつ鎮静効果により、猫に恐怖を与えるような様々な刺激に対する過剰な反応を抑え落ち着かせることができます。

なお、瞬膜の突出についてはそれが両側性に見られる症状なのか、それとも片側性に見られる症状なのかによっても診断は違ってきます。両側性の場合であれば、多くはウイルス感染による上部気道炎(鼻気管炎や喉頭炎など)や胃腸炎などにともなって現れ、通常は数週間で治癒しますが、慢性的なストレスなどにより免疫力の低下があれば経過が長引くこともあるでしょう。片側性の場合は、角膜炎などのほか眼に分布する交感神経の障害によって引き起こされるホルネル症候群のような疾患によっても出現しますが、後者の場合であればほかにも暗い場所で瞳孔が縮小したままだったり、まぶたが垂れ下がり目が十分開かないといった特徴的な症状が見られます。



★★相談内容★★

早急な回答、ありがとうございます。引越しが猫にとって大きなダメージになったとしても、外へ出たがる気持ちは一度リセットされるということで少し安心しました。これを機に家の中だけが自分のテリトリーなのだと思わせ、絶対に外へは出さないようにしたいと思います。

そして瞬膜の突出は両目なのですが、症状が出てからもう1ヶ月になります。風邪をひいている感じはないし、食欲はあるので胃腸炎でもないように感じます。それならおそらく慢性的なストレスかもしれませんね。病院から外へは出さないよう指示される前までは週2回は外へ出してあげていたのに、知らない間にストレスを貯めていたのでしょうか。それとも何か他に気づかないところでストレスを与えていたのかもしれませんね。

今後は新しい住まいで、先生のおっしゃっていたように最初は狭い空間で落ち着けるように準備したいと思います。そしてもっといたわってあげたいと思います。猫を引越しさせるときの質問の回答も本当にありがとうございました。さっそく地元のペットクリニックで処方してもらうよう相談してみます。