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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.105:突然警戒しだして過剰グルーミングが始まった猫


★★相談内容★★

初めて利用させていただきます。我が家の猫(1歳、雑種オス)についてです。普段は穏やかでいつも目の届く範囲で寝転がってたりしてるのですが、5日ほど前から突然パニック状態になり物陰に隠れたり過度なグルーミング、スキンシップを嫌がるようになりました。普段のスキンシップは撫で回したりお腹をぺちぺち(本人は真顔無抵抗)したりおしりを触ったり、大抵のことは全く気にしないのですが、この状態になると触れられることも嫌がります。

ただ、常にこうという訳ではなく普段通りかと思えば唐突に警戒し、逃げ出したりします。直前まで私の手にグルーミングをしてくれている時や、撫でられて喉を鳴らしているリラックス状態でも思い出したかのようにスキンシップを拒み、逃げたり手足、尻尾を舐めまわしています。一度、去勢をした時も同じ状態になりました。その時は2日ほどでいつも通りに戻ったのですが今回は中々戻らないので気になります。病気も考えましたが、食欲や水分補給、糞尿は問題ない為精神的なものなのかと考えます。

グルーミングも1箇所ではなく、手や背中、足や尻尾など特定の場所ではないため、痛みによるものでもないのかなと思います。また、自身は霊的なものは信じていないのですが家の一角(神棚)に向かってしきりに鳴いていることもありました。この1年、そのようなことはありませんでした。

ストレスを与えたかと考えたのですが、こうなる直前少し外に(玄関先まで)連れ出したくらいです。普段から外への興味は強く、1度脱走経験もある為たまに外を見せに抱えて出す程度ならこれまでも何度か行っていたので問題ないと思っていましたが、もしかしたら関係あるかもしれません。ゆったりした性格ですが、最近は何かと過敏になっているので知り合いの元動物病院勤務(獣医ではない)に聞いたのですが知覚過敏症候群ではと言われました。

続くようなら病院も考えていますが、仕事の関係で2週間後にしか行けなさそうなので何かの可能性があるならお聞きしたいです。緊急性を要するようなら、夜間の病院でも連れていこうかと思います。



★★助言内容★★

今回猫さんに突然始まった過剰グルーミングや過剰発声といった行動は常同的行動と言われるものですが、その頻度や持続時間が一般的に見て正常とは思えないレベルにまで増加し、しかも一旦それが始まると一切抑制が効かないような状態になってしまっている場合は、常同障害という神経症をまずは疑ってみる必要があります。

なおこの常同障害という病気には、遺伝的要因や環境的要因などが関与している可能性が示唆されてはいるものの未だ十分な解明はされていません。ただ今回のケースで見られる徴候はいずれも常同障害に分類される病態の特徴を示しており、知り合いの方が言っておられる知覚過敏症候群もそのうちのひとつですが、もし最大の特徴である波打つような皮膚の痙攣や筋肉の痙攣などの症状も見られるようですとその疑いは一層深まります。

ただし、猫さんに見られ行動は必ずしも常同障害だけに見られるものではありませんので、それと診断するためにはほかに同じような行動を示す疾患を除外する必要があります。例えば、脳神経系の異常興奮である発作の中でも部分発作と呼ばれる病態においては、今回のような行動に繋がる意識や感覚の変化に加え常同的で反復的な行動や幻覚などが現れることがあります。

ほかにも何かあって一時的に強いストレスに晒された猫さんが、その動揺を鎮めるために唐突に過剰グルーミングをし始めるといったいわゆる転位行動を示した際に、あなたがそれに関心を向けすぎてしまったりするとその行動が強化されて行くことがあります。それはあなたが関心を向けたことが猫さんへの報酬となってしまい、そのご褒美が欲しくて猫さんが同じ行動を繰り返すようになるという訳ですがそれも否定はできません。

それ以外にも、末梢神経障害を始め皮膚の痒みや関節の痛み(痛みが生じた部分だけをグルーミングするとは限りません)などを伴う身体的疾患でも猫さんの挙動不審や過剰グルーミングは誘発されます。ただいずれも緊急性を要するものではありませんので日常生活に著しく支障を来すほどの事態でなければしばらく様子を見るようにして、2週間後もそれが続いているようであれば改めて原因を明らかにするため動物病院を受診すればよろしいのではないかと思います。