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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.12:尋常ではないほどの病院嫌い。


★★相談内容★★

初めてメールをさせて頂きます。◯◯と申します。動物の心理ケアも大切に考えておられる先生のクリニックについて(奇しくも別の)動物病院の長い待ち時間にたまたま読んだ猫雑誌で知りました。つきましては、不躾でございますが、お伺いしたいことがあってメールさせて頂きました。

我が家の愛猫××は、雑種(茶虎柄)の雌で3歳になります。生まれてまもなく家族となり、我々夫婦と仲良く暮らしています(二人とも働いており、日中一人にすることが多いですが、とても大事にしておりできる限り一緒に遊びスキンシップも多い方かと思います)。家の外には出さず行動範囲は3LDK内Only。

最近、気になる点:?尋常でない病院嫌い。先日も定期検診に行った際、待ち時間は不安気ながらミーミーか細く鳴く程度ながら、診察室に入るや否や診察台に降ろすのに殺されんばかりに暴れて騒ぎ抵抗し、文字通り「引きずり出す」のに先生とスタッフ3人がかり。

脱尿・脱糞までしてしまって、見るに耐えぬ様でした(避妊手術を含め、過去3回連れて行った夫によれば、毎回このような状況と)。触診・診察などできる訳もなく採血するのみで帰宅。帰宅後もしばらく人間不信で怒り狂っておりましたが、数時間で落ちつき、後は普段の甘えん坊に戻りました(普段は静かな優しい子です)。

今のところは若いし、特別健康に問題はなさそうなので良いのですが、これから歳をとるにつれ、病院にお世話になることは多いと思い今から慣れて欲しいものの、あの様ではついストレスが気になって必要な場合でも躊躇します。

これは気質でしょうか、以前の体験でトラウマでも残っているのでしょうか。慣れるものでしょうか。このような患者をどう分析されますか、どう扱われますか。

?日当たりの悪い我が家。ご多分に漏れず、うちの猫も陽だまりが大好きです。が、残念ながら我が家にはあまり陽が入りません。冬場はまだ陽が低いため午前中しばらくは入り、その間は窓際にぴったりくっついて寝ます。ですが今月くらいからは家の中にめっきり日差しは入らず、朝から陽を探し諦めて寝る姿は可愛そうでなりません。

状況が許す場合にのみ最近は、ベランダの室外機の上にお気に入りマットを出し私が付いて日向ぼっこをすることもあります(15分程度)。自由にベランダに出入りさせてあげられれば良いのですが、軽く飛び越えて外に出る脚力がある為、不可。

このように、年に半分は陽を楽しむこと無い状況で、猫の健康上、問題は無いのでしょうか。本人の心理的にはどうなんでしょうか。外に出す機会を何とか増やした方が良いのでしょうか。一度外を知るとかえって家内にいなければならない状況がストレスでは、とも考えてしまいます。

客観的には、普段、環境に慣れて生活をしているように見うけられ、天気・日当たりの悪い日、一人でいなければならない時間などは、静かに窓際や布団の中で寝ています。運動は早朝や深夜に走り回り、かくれんぼなども。気を引く時は嫌がらせで絨毯掘りやアンプを引っ掻き、活発な時は子供らしく活発です。食事は乾燥タイプと半生タイプを日に2回与えています。

長生きしてもらいたいのでホームドクターを決めてあげる必要を感じます。ぜひアドバイスを頂きたく、今度は(お世話になる必要が無い方が嬉しいものの)直接診て頂ければと思います。宜しくお願いします。



★★助言内容★★

もともと環境への依存度が極めて強く、一定の場所に定住してそこから移動することのなかった猫という動物にとってみれば、普段住み慣れた場所から連れ出されること自体、本来であればあり得ない体験を強いられることになるわけです。それを考えれば、連れていかれる先が動物病院であれどこであれ、その際に彼等が味わう不安や恐怖はおして知るべしでしょう。

ましてや、日頃見なれない人間にいきなり体を触られたり、押さえ付けられたりすれば、その心理的動揺は尋常のものではありません。もちろん、その際の反応の仕方やそれに慣れるかどうかといったことは、個体毎にそなわった感受性や脅威に対する適応能力などによって違ってきますが、それにはこれまでの生活環境や体験してきたことも大きく影響します。お宅の猫ちゃんのようなケースもあれば、まるで平静でいられる(多くはそう見えるだけかもしれません)猫もいるのはそのためです。

いずれにしても、猫にとってみれば恐いものは恐いわけで、そこでは人間の理屈はとおりませんので、診療に際しては、可能な限り無理強いすることや、不安や恐怖を増幅させるような不必要な刺激を避け、パニック状態に陥らないようにするしかありません。それも避けられないということになれば、当院の場合は、来院する前に鎮静効果のある抗不安薬などを少量服用させることも考慮します。

動物が嫌がって暴れてパニック状態になろうとも、その健康を管理したり病気を治してやるためには、やるべきことはやるといった姿勢で臨むか否か、それは保護者や病院側の価値観や理念の問題ですが、当院ではそこまですることは本意ではありません。したがって、不安軽減のための配慮やだましだまし作戦がどうしても通用しないということになれば、ご希望にそえないことが出てくるかも知れません。

一般に哺乳動物は、日光の中の紫外線の存在下で、皮膚に含まれる脂質成分から必要なビタミンDのほとんどを合成しています。そのため、食餌によりそれを摂取しなくてもすみますが、逆に日光に当たらないとビタミンDが不足し、カルシウムの吸収が障害されて「くる病」になることがあります。

ただし、猫の場合は、もともとビタミンDの要求量が極めて少ない動物であり、乳児期に母乳から摂取し、体内に貯蔵してあったビタミンDを利用することで事足ります。そのため、カルシウムとリンのバランスがとれた食餌さえ与えられていれば、紫外線に当たらない環境下でも健康に支障をきたすことはありません。これは夜行性の動物の特徴でもあります。



★★相談内容★★

まだ患者でもない我が家の疑問にご丁寧にお答え頂いて感謝します。大変よく理解することができ、気が楽になりました。

相手がモノ言わぬ動物の場合、元気が無い、いつもと様子が違うというだけで、何かあったらいけないと診察に連れていくことを考えがちですが、しばらく様子を見れば元通りの場合もしばしば。

診察室でのストレスよりも、自己治癒力を信じ見守る方が良い場合も確かにあります。何にせよ、そばにいる飼い主が、健康状態の良し悪しを正確に見て取れる様にならなければと勉強の必要性も感じました。

お医者様に助けて頂かなければならない時には、お世話になることと思います。その際はどうぞ宜しくお願い致します。有難うございました。