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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.19:去勢後もスプレーとマウンティング。


★★相談内容★★

はじめまして、イギリス在住の○○と申します。言葉の問題もあってなかなか飼い猫の健康に関してこちらで情報収集が出来ず、ちょっと苦労しております。お忙しいとは思いますが、私の質問につき、ご教示いただけますでしょうか。

現在3歳のオス猫を飼っております。1歳半の時に去勢手術をしたのですが、去勢後も立って後ろにおしっこを飛ばしたり、毛布を噛みながらマウンティング(勃起しています)行動をとったりします。以前Q&Aにメス猫の卵巣再生の質問がありましたが、オス猫にも同じような現象があるのでしょうか。

また、去勢後1週間めくらいに下部尿路疾患にかかり、その後も1回再発しています。また、去勢、病気の時期を境に、攻撃的な問題行動がみられようになりました。去勢により特定の病気を引き起こしたり、問題行動が起きるようなことがあるのでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。



★★助言内容★★

お宅の猫ちゃんに去勢後も見られる、尿スプレー、勃起を伴ったマウンティングはいずれも雄の性行動のひとつですが、去勢された雄猫全体のおよそ10%に、このような行動様式が残っているという報告があります。これには、新生子期において、雄猫では出生直前、もしくは直後に雄性ホルモンの一過性の放出が起こり、それによって脳神経細胞が雄性化されますが、そのことが多大に関係しています。

すなわち、生後4〜12ヶ月の間に精巣の発育に伴って雄性ホルモンの分泌が亢進し、その作用により様々な雄の性行動が出現するようになるわけですが、それ以前の段階ですでに雄性化された脳神経細胞により、後の雄猫の性行動は方向づけられているわけです。したがって、精巣を摘出された去勢猫であっても、上記のような行動が見られることに不思議はありません。

それは、これらの行動の発現は通常は雄性ホルモン濃度に依存していますが、自分の縄張りに何者かが侵入するといった特定の強い環境刺激によっても、すでに雄性化している脳神経細胞は同じように活性化されるからです。さらにその後の学習によって行動が固定化されることもあります。

猫ちゃんが心理的動揺を来たすような環境刺激について、何か心当たりはありませんか?もっともお宅の猫ちゃんの場合は、去勢したのがすでに性成熟が終わっている時期ですので、尿スプレーなどの性行動はすでに日常行動として発現していた可能性があり、去勢後のそれはその時の学習によるものかもしれません。

去勢手術、下部尿路疾患を境にした攻撃行動の発現については、恐怖や痛みにより誘発されたものが学習により強化された可能性が大です。臆病な性格の猫の場合、動物病院での扱われ方次第では、恐怖誘因性の攻撃行動はしばしばみられます。また、去勢手術であれ下部尿路疾患であれ、病院での処置時などに強い痛みを伴うようなことがあり、その際に体を触られたことと痛みが結びついてしまうと、その後触られただけで攻撃行動を示すようになることもあります。

今回の攻撃行動や下部尿路疾患を、去勢そのものと結び付ける根拠はあまりないと考えていいでしょう。ただお宅の猫ちゃんにはあてはまりませんが、性成熟前に去勢した場合は、その後のペニスの発育が抑制されるため、尿栓子による尿道閉塞などの下部尿路疾患を起こしやすくなるということはありますので、ご参考までに。


★★相談内容★★

お忙しい中、早速お返事いただきどうもありがとうございました。私の書いた質問メールよりずっと長いお返事をいただき、恐縮しています。猫の行動について、良くわかりました。

>猫ちゃんが心理的動揺を来たすような環境刺激について、何か心当たりはありませんか?

→思い当たることはたくさんあります。うちの猫は前回の海外滞在中に拾って飼っていたのですが、帰国後マンションに済むことが決まり、狭い環境のストレス軽減になればと、帰国直後に去勢しました。

しかし、結果的に長時間のフライト、新しい住環境、去勢手術、我々夫婦ともにフルタイムの仕事に着いたために長時間一人で留守番する生活・・・とストレスが一気に猫に押し寄せてしまったと思います。

今回もイギリスへの引越しはかなりの心理的負担になったと思いますが、私が専業主婦になったので、1日中猫と一緒に過ごすことができ、東京の生活よりは徐々に落ち着きつつあるように見えます。

転勤族である我々は猫にとって迷惑な飼い主かもしれませんが、出来るだけ今後も愛情を注いでやりたいと思います。どうもありがとうございました。