ほかの動物病院のHPで猫の問題行動の質問をしたところ、こちらを紹介して頂いたのでメールさせていただきました。お忙しいとは存じますがよろしくお願いいたします。
今、去勢したオス猫(推定11歳)とメス猫(推定10ヶ月)の2匹がいますが、2匹とも瀕死の状態でいたところに遭遇してうちの子になりました。問題なのは後から来たメス猫なのですが、生後1ヶ月経つか経たないか位のときにうちに来て、色々手を尽くして元気になってくれたのですが、最近初めてのさかりが来たのですが、それと前後して排尿をトイレ以外でするようになってしまいました(特にソファやクッションにすることが多いです)。昨日、今日とウンチまでするようになってしまって困っています。今までは、トイレも2つに分けて教えたトイレできちんとやっていました。サカリのせいなのか、それとももっと違う問題があるのか困惑しています。
仕事を持っていますので昼間は2匹で留守番していますが、トイレの一件でトイレの置いてある部屋に閉じ込めています。このままだと2匹ともストレスが溜まってしまうだろうし、何とか解決したいのでご指導いただければ幸いです。どうかよろしくお願いいたします。
猫には雄雌を問わずマーキングといって、匂いづけのために様々な場所や物に自分の尿をかけてまわる行動が見られ、時には便がその目的に利用される(ミドニングと言います)こともありますが、これはほかの猫に自分の存在をアピールするための名刺のようなものだと考えられています。
とりわけ発情中の雌猫については、雄猫を誘引するための特殊な物質(フェロモン)が含まれている尿をいたるところにまき散らすマーキング行動が頻繁に起こるようになります。この場合、雄猫のマーキング行動(スプレー)と違うところは、霧状になった尿を壁や家具などの垂直面に向かって吹き付けるのではなく、所構わず少量の尿をピュピュっとかけてまわる(一度でもかけられたことのある場所は、その匂いによって排尿が誘発されるため何度もかけられます)排尿行動が特徴です。
いずれにしても、それらの行動は猫本来の習性にもとづく正常な行動であり、地球上にその種が誕生してから今日に至るまで、雌猫としては発情中に効率良く雄猫を招き寄せ、交尾の機会を得るための合目的的な手段となっているわけですから、避妊手術を施すなどして発情を抑制しないかぎり今後も起こります。猫が発情する度に同居人としては不都合きわまりないそれらの行動を容認するのは到底無理だということになると、残念ながらその方法以外に解決策はありません。
問題はあくまで猫の都合を優先させるのか、人間の都合を優先させるのかということになるわけですが、猫から発情する権利を奪う上記の方法は、理由はともあれ結局のところ人間の都合を優先するものです。その点、現在のように発情中は一時的に猫を狭い場所に閉じ込めるという方法は、特定の場所にかぎって汚されることを覚悟するかわりに、その間の拘禁によるストレスは覚悟してもらうという人間と猫の双方に均等に犠牲を強いるものであり、共棲関係のあるべき姿としてはそれもありかもしれませんね。
メール ありがとうございました。とても勉強になりました。
メス猫にもマーキング行動があったんですね。「もしかしたら…」とも考えましたが、明確な回答が得られないまま躾け方が悪かったのか悩んでしまいました。でも、メス猫の発情期の主だった行動と判れば悩みも半減します。
今後手術するかどうかは、様子を見ながら家族と相談して決めたいと思います。人間の都合で避妊手術をしていいのか…。でも子供を生ませるつもりは無いので、反対に発情してる子を見てるのが切なくなっても来ます。
先生のクリニックが近くでなくて残念です。お忙しい中、本当に本当にありがとうございました。