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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.28:新参猫との顔合わせ後兄妹猫を威嚇し続ける。


★★相談内容★★

はじめまして。4歳半になる兄妹猫を飼っているものです。この度は♀から♂への威嚇について相談があります。2匹は4年前、里親募集から一緒に譲り受け、これまで問題行動はなく過ごしてきました。べったりというほどではありませんでしたが、猫同士上手くやっていたと思います。

今回相談の威嚇・攻撃性について、事の発端は新しい成猫を迎え入れたことです。7月に近所で一人暮らししていた祖母が脳梗塞で倒れ、祖母が飼っていた猫(2歳♂)をうちで世話できないかと連れてきました。新入りはケージ+部屋ごと隔離していましたが、2匹でドアをバリバリ開けて対面、案の定3匹とも激しく威嚇。すぐに2匹を部屋から出しましたが、今度はうちの2匹同士が険悪に…。(この時点で♀の方がピリピリしていました)

うちの猫同士がこの状態では新入りの受け入れなど難しいと思い、すぐに新入りは祖母宅へ戻しました。その後♂の方は普段通りに戻りましたが、♀の方が治まらず、一度2匹でギャーッと叫ぶ大喧嘩に。大きな傷は出来ませんでしたがどちらかがおしっこを漏らすほどのもので、母と二人必死で止め、隔離。その日から丸一日、♀は人間にも威嚇していました。

数日隔離した結果人間への威嚇はすぐ治まりましたが♂への威嚇が治まらず、かかりつけの病院で相談。「2匹を隔離しつつ、存在は認識できるようケージ越しの対面や匂いのついたものを交換などで様子見」との指示で、フェリウェイも試しつつ今日まで対処してきました。

事件から3ヵ月半、今の状況は ・♀の隔離部屋へ♂を抱っこして連れていくと、♀の方から寄ってきて♂の顔をペロペロ舐めるようになった(♂も舐め返します) ・しかし抱かれている♂が少しでもバタバタ動いたり、床に♂を下ろそうとするとシャーッウーッと威嚇し逃げる ・2匹とも隔離して顔を合わせなければ普段通り落ち着いている

3ヵ月前は扉越しに気配を感じただけで威嚇、その後威嚇しつつも舐める、と段階を経ての今この状態です。とにかく♂が両手両足を床につけて近くに来ると♀は必ず威嚇します。(♂の方から威嚇することはありませんが、♀があまりに威嚇すると♂も唸ります。)

威嚇したり顔を舐めたりする♀の心理もわからず、このままの対処でいいのかも不安です。2匹にストレスを与えてしまい申し訳ないのと、人間都合ですが隔離生活もしんどいものがあり困っています。遠方のため電話でのカウンセリングを検討しております。在宅治療で何とかなりそうでしょうか。



★★助言内容★★

今回のケースの発端は、ある日突然降って湧いたかのように自分達のテリトリー内の核心部に見知らぬ猫が出現したことでパニック状態になり、その高揚が治まらないうちに怒りをぶつける肝腎の相手が目の前から消えてしまったため、その矛先がたまたま側にいた同居猫や飼主に向けられてしまった転嫁性の攻撃行動(俗に言う八つ当たり攻撃)かと思われます。

この場合厄介なのは、怒りのレベルが高く高揚状態が長く続いていたがために執拗に八つ当たりしてくる雌猫さんに対し雄猫さんが本気モードで激しく応戦してしまったことで、雌猫さんの中では雄猫さんはイコールいつ何時自分を攻撃してくるかもしれない存在として条件づけられてしまった(そもそもの原因は再三攻撃を仕掛けた雌猫さんにあるのですが)可能性があります。

その結果、雄猫さんのちょっとした動きなどが刺激となりそれに雌猫さんが反応して無意識のうちに自己防衛のための威嚇行動のスイッチが入ってしまうというわけです。一旦そのように条件づけられてしまうと本人の意思や心理状態とは無関係に条件反射的に体が反応してしまうため、それに対する雄猫さんの対応次第では飼主さんも巻き添えを食う大喧嘩勃発といった事態が発生するリスクも高まります。顔を舐め合ったりして一見仲良く振舞っていても、何が刺激となって威嚇反応が起こるかおよそ予測がつかないため油断はできません。

こうしたケースでは一般に脱感作療法や逆条件づけといった行動治療を取り入れて行動修正していくことで事態の収拾を図りますが、現在なさっている対処法には一部不十分な点や進め方に誤りも見受けられますので再考が必要かと思います。また双方を隔離し続けることが難しいといった問題に対しては、向精神薬を補助的に用いることで隔離せずに同様の効果が期待出来る場合もあります。なお、行動治療はカウンセリングでの処方に基づき全て在宅での治療となりますので通院などの必要はありません。カウンセリングは電話でも可能ですのでご検討ください。