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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.34:同居の犬と猫を突然攻撃し始めた


★★相談内容★★

猫3頭と犬1頭を飼育しております。7歳メインクーン雄は生後6ヶ月でペットショップから我が家にやってきました(去勢済み)。4歳の黒猫(雄)は生後2ヶ月くらいの時に友人が物置で保護したのを引き取りました。メインクーンは黒猫が来てからというもの甲斐甲斐しく親のように黒猫の世話をして、とても仲良しでした。黒猫は血液データに異常があり手術を断られたため、去勢できずにいました。夜鳴きやスプレーなど多少の問題行動はありましたが、そのまま飼っていました。

去年の夏、市内の愛護センターから避妊済みの後2カ月ほどの仔猫を家に迎い入れました。メインクーンは黒猫が来た時と同じように接していましたが、黒猫はじゃれてるのか攻撃してるのかわからない感じだったので、仔猫はしばらく別室で飼っていました。

少しずつ慣れて来たある日のこと、3匹で遊んでいるときに黒猫がメインクーンに突然襲いかかりました。流血するほどの攻撃で、それからというもの黒猫がメインクーンを執拗に攻撃します。そして黒猫のマーキングや夜鳴きが劇的に増えました。

動物病院に相談し黒猫の去勢手術を行いました(そこの病院では手術を受け入れてくれました)。問題行動はなくなりましたが、メインクーンへの攻撃はおさまりません。そのうち、犬(コーギー11歳雌)のキャン、といった鳴き声などに反応して犬へも攻撃します。

犬と黒猫は普段並んで寝そべったりしているのですが、犬の声色に過剰に反応しているようで、今日も犬の爪切りをしていた時に犬がキャン!と鳴くや否や黒猫が犬に飛びかかって来て流血事件でした。人が止めに入っても、人に向かって攻撃することはありません。

メインクーンは、現在別室で飼っており、1日に少しの時間ケージ越しに黒猫と合わせたりしています。黒猫と3匹目の仔猫はいつも一緒にいます。仔猫とメインクーンは2匹だけで遊ばせても問題ありません。

メインクーンは黒猫を怖がっているのがわかり時々威嚇しています。最近は、黒猫がケージ越しにメインクーンにちょっかいを出しても威嚇せずにいることが多くなりました。仔猫がやってきてから半年になりますが、メインクーンはずっと別室暮らしで、たまにドアを開けて出て来てしまい黒猫とケンカになり…というのを何度か繰り返しています。

時間をかけて、メインクーンと黒猫を少しずつ慣らしていくつもりですが、最近は犬にまで攻撃をするのでどういう状況なのか悩んでおります。犬とメインクーンは問題なく一緒にいられます。

犬が悪いことをして人がコラ!と怒ったりしたときも、黒猫は鋭い目つきで犬を見て駆け寄り攻撃しそうな素振りを見せます。仔猫がビックリした声を出したりする時も、そばにただ犬がいるだけで犬に向かって全力で攻撃します。でも、普段は3匹一緒の空間にいて、黒猫も仔猫も犬の横に寝そべったりするので、どんな風に対処していけばよいものか頭を悩ませております。

長くとりとめのない文章になってしまい申し訳ございません。彼らの関係を改善していくためのヒントはあるでしょうか。市内の動物病院に相談しても、なかなかこれといった解決策が見出せていません。お忙しい中恐れ入りますが宜しくお願い致します。



★★助言内容★★

問診によって得られた詳細な情報を分析評価したうえでの診断結果に基づくものではないので断定はできませんが、今回の猫さんの同居犬と同居猫への攻撃行動は、その置かれている社会環境における同種間および異種間での順位や地位をめぐっての自己主張性の攻撃行動である可能性が高いように思われます。

猫の場合は通常2〜4歳で社会的成熟期を迎えますが、この頃を境にしてその自己主張や支配欲が一気に強まる傾向があります。そのため同居しているほかの猫や犬あるいは人に対して威嚇したりすることにより、あからさまに相手を支配しようとしたりその行動をコントロールしようとする猫も出てきます。それは周りの社会に対する猫の見方が変わったためですが、今まで仲良く同居していたのに、突然攻撃してくるようになったことで困惑する飼主の方は多いと思います。

今回攻撃行動が見られる猫さんの年齢も4歳ということでその社会的成熟期に該当すること。加えて攻撃する相手に対してはどんな時でも常に攻撃的なわけではなく、決まって相手の動きなどに反応して攻撃していることなどからみてもその疑いは深まります。すなわち、自分の意にそぐわない行動をした相手を攻撃することで屈服させ相手を意のままに操ろうという意思が感じられます。

なお、犬と猫ではその社会システムが違うため、同じ行動であってもその意味するところが異なったり、同じ状況でも両者の出すサインは異なります。そのため相手をコントロールしようとする猫の行動に対する犬側の対応が噛み合わないことは十分考えられることで、今回のケースではそのことが猫の苛立ちを買い結果的に攻撃行動を強化させている可能性は否定できません。

それが同じ社会システムを有する猫同士となると両者の交流に齟齬を来たすことはなくなりますが、そこに社会的上下関係が絡んできた場合には今回のような攻撃行動を伴う闘争が起きることはあります。その際にはお互いの自己主張の強さや自信のあるなし、社会的地位へのこだわりなどによって攻撃行動のパターンも変わってきますが、今回のケースでは攻撃する側の猫さんが仕掛けているのは、自信のある猫に多く見られる守勢的攻撃行動ではなく総じて攻勢的攻撃行動であることからみて、攻撃される側の猫さんに当の相手に一歩譲る気がないため攻撃する側の猫さんとしては不安を感じているのかもしれません。

ということで、上述したことはあくまでも推定の域を出ませんのでご参考までにしていただければと思いますが、仮にそのようなことがあるとすれば事態は一筋縄ではいかない非常に厄介な状況であり、これをすれば万事解決といった安易な改善策は残念ながらお示しできません。悪しからずご了承ください。