病院ロゴ
病院ロゴ
猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.40:引越して子猫を迎えてから人への攻撃が激化


★★相談内容★★

はじめまして。ある方のブログにこちらのことが紹介されており、相談させて頂きたいと思って連絡致しました。うちの猫の攻撃行動についてです。メインクーンの3歳オスで、とくに病気などは指摘されたことはありません。といいますか、病院には連れて行けず、連れて行っても暴れて診察ができない状態なので詳しい検査をしたことはありません。

子猫の時から気性は荒く、一度友人から茶化して脅かされたのをキッカケに知らない人が来ると威嚇するようになりました。それから唯一慣れていて威嚇をしない友人だけを家に呼ぶようにして過ごしていました。またそれからは落ち着いていたので、引っ越しとメスの子猫を迎えました。ですがそれからというもの、お客さんには必ず威嚇、自分から近づいていっていきなり攻撃するようになってしまいました。

威嚇、攻撃の強さもかなり増してきて、お客さんを呼んでいなくても私にいきなり攻撃して来ることが増えました。威嚇、攻撃が始まるきっかけがまったくわからないのです。友人と電話していたら突然唸り声をあげて襲って来る、ご飯をあげようとしたらいきなり叫び声のようなものをあげて飛びかかって来る…といった感じです。そして逃げれば追いかけてきて引っ掻く、噛むを繰り返すため、もうそうなったら無理やりつかんでケージに入れるしか方法がありません。ケージに入ってもしばらくは威嚇しておりケージ越しに飛びついてきます。

唯一慣れていた友人にも突然襲いかかり頭に噛みついてしまいました。昨日もいつも通りご飯をあげようとしたら突然襲われ、両手を噛まれ、腫れて痺れているので動かせません。一人暮らしで二匹飼っているため、私が負傷するとお世話も出来ず仕事にも行けないため困り果てています。動物病院にも相談しましたが、性格だからと言われたりしました。精神安定剤をもらったりもしましたが、この先日常的にずっと使うのもどうかなと思ったりして今はどうしようもない時だけ使っています。

私は猫シェルターでボランティアをしていますが、たしかに人間が嫌で威嚇する子や攻撃的な子はいます。ですが、うちの猫みたいに狂ったように怒り出し追いかけ回して襲って来るような猫は見たことがありません。当然うちの子を見たことがない人は信じてくれません。育て方が悪いと言われます。本当にそうなのでしょうか?もう一匹は穏やかですし、今まで育てた子も気性が荒くはなかったです。救いなのはメス猫にはまったく手を出さないことで、猫同士は大丈夫なようです。

現在は悩み抜いた結果、共存するためには抜爪手術と牙を短くしてもらうしかないかなと思っています。抜爪手術も色々あるようで、爪は除去せず爪を出さなくさせる手術がいいのでは…などとも考えています。でもできればしたくないです。しかし猫にも私にもそれが一番安全に暮らしていける方法なのではないかと思うのです。それしかないような気もします。でもその前に相談させていただき、ご意見をききたいです。よろしくお願い致します。



★★助言内容★★

猫さんの攻撃パターンを見ると自分の方から相手に近づいて行ったり逃げる相手を追いかけてまでして攻撃しており、そのようなケースでは恐怖が原因で引き起こされるような自己防御的な受身の攻撃行動は考え難く、むしろ相手をはっきり自覚したうえでの故意によるその行動には何らかの強い意図が感じられます。

なお、今回の攻撃行動が引っ越しや子猫を迎え入れた直後から激化し始めたことや猫さんの年齢などから考えると、ただでさえ社会的成熟期真っ盛りで社会への見方が変わってきている猫さんにおいて、引っ越しによって生活圏がリセットされたためそれを再構築しようとする過程でその縄張り意識や生活資源の獲得権に対する自己主張が一気に強まった可能性もあり、それが攻撃行動に結びついてしまったというようなことがあるかも知れません。

この場合の生活資源とは、食べ物やお気に入りの場所、愛着のあるものなどですが、生活圏におけるそれらの存在は縄張り意識を刺激し時として他の者がそれに近づこうとしただけで攻撃対象になることもあります。そういった際に子猫が攻撃されないのはよくあることで、そんな時は子猫が猫さんの愛着の対象になっていることがしばしばで、そんな子猫に何かしたりすれば獲得権を主張する猫さんに逆に攻撃されるといったことも起こります。

もしそのような縄張り的要素の絡んだ自己主張性攻撃行動であった場合、往々にして猫が何かを主張していても飼主がそれに気づかずに不用意な行動をとってしまっていることが多く、猫の側がそれを自分への挑戦と受け取って攻撃行動を激化させるリスクが常に付きまといます。治療には他の攻撃行動と同様に行動修正が有効ですが、飼主の日頃の行動が知らず知らず猫の主張を強化させてしまっている面は否定できませんので、その際には猫との交流の仕方を根底から見直すケースも生じます。

当方の診療は猫の問題行動に正面から向き合い、その大本の原因を明らかにすることで行動の改善を図りつつ飼主と猫との間により望ましい関係を再構築しようというものです。繰り返される激しい攻撃とそれへの恐怖に晒され続け藁をもすがるお気持ちは理解できますが、抜本的な問題解決とは程遠い場当たり的な抜爪手術や犬歯の切断はそんな当方の診療理念とは相容れないものですので、それへの意見は差し控えさせていただきます。