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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.51:飼主が自分に注目してくれるまで鳴き続ける


★★相談内容★★

はじめまして。6歳の雌猫ミックスの○○(避妊済み、健康面過去に骨折のみ)についてお伺いします。小さな頃に骨折をしている所を公園で保護され、保護団体さんの元でお家が決まらず転々としていたと聞き我が家でも1匹拾った所だったので、仲良くなればと引き取りました。2匹は仲良しで、後にもう2匹拾い、現在4匹おります。全員の仲も良好です。

◯◯は、小さな時にお家を転々としたせいかとにかく人に対する執着があります。最近では顔を見て鳴きまくり、撫でて貰えるまで 鳴き続けます。同じ家の中でも少し離れたら追いかけてきて鳴きまくり、自分の所に来てもらえるまで鳴きます。

分離不安について勉強すると構い過ぎではいけないとあり気をつけてはいますが、ご近所に迷惑な程鳴き叫ぶのでずっと放っておく事も出来ません。ジルケーンやギャバも試しましたが、薬に敏感で中身だけ出してオブラートもうまくいきません。夫と私の姿が見えると撫でてもらえるまで執拗に鳴き、撫でたら震えるほど喜びフミフミしながら歩きます。そのくせ抱っこは嫌いな子です。

この子自身、しんどいだろうと思うとたまりません。何かアドバイスがあればよろしくお願いします。鳴きまくる、鳴き叫ぶ、走り回る以外は、特にトイレの失敗もなく、人がいない間は他の猫と一緒に寝たりして問題なく過ごしております。



★★助言内容★★

ご相談の猫さんの問題行動に関しては、おそらくご心配されているような分離不安ではないと思います。というのも、少なくとも人がいない時には今回問題になっている鳴き叫んだりする行動は一切見られないようですが、分離不安があれば本来そのような状況でこそ不安がより一層増すため問題行動が頻発するのが常であり、それが全くないということは極めて不自然です。

どうもご相談内容に示された状況から見る限りでは、猫さんは典型的な幼形成熟(ネオテニー)形質を有する個体である可能性が高いと思われます。この幼形成熟というのは、動物の世界において幼児における身体的あるいは精神的な特徴が成長後にも色濃く残っている状態を指すもので、我々人間はもとより猫においても姿形や気質さらには行動がいつまでも子供っぽい個体には大なり小なりそれが見られます。

なお、幼児は母親なしには生きられない存在ですから常に母親に関心を向けています。普通は成長の過程でその関心が他のものに振り向けられていくのが、幼形成熟の個体では母親への関心を他に振り向けられるようになるのが遅かったりうまくできないということがよくあります。

今回の猫さんの一連の行動にはそのような幼形成熟の兆候が散見されその可能性が強く示唆されますが、その場合は言ってみれば極めて幼児性の強い猫さんが飼主さんを母親のような存在とみなし、ひたすらそれに関心を向けようともしくはその関心を引こうとしている訳です。

このようなケースでは、猫さんがこちらの関心を引こうとして鳴き叫ぶたびに撫でてやっているとそれがご褒美になってしまい、鳴けばご褒美にありつけることを学習した猫さんは益々その望ましくない行動を強化させてしまいます。

それを避けるためには、四六時中飼主さんに関心を向けようとする猫さんの望ましくない行動を別のことに関心を向けさせることで望ましい行動へと誘導する、行動変換代入法などといった行動療法を用いて行動の修正を図るのが一般的です

ただし、今回のケースが上述した幼形成熟以外の原因によるものである可能性も完全には否定できずそれによって対応も違ってきますので、具体的な方法については問題行動の詳細を明らかにするためのカウンセリングを受けていただかなければなりません。



★★相談内容★★

先生、返信をありがとうございました。何度も読ませて頂きました。なんとお礼を申し上げたらいいのか。よく理解出来ました。ありがとうございました。