病院ロゴ
病院ロゴ
猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.59:赤ん坊の泣き声に反応して突然凶暴化。


★★相談内容★★

飼い猫の凶暴化について。はじめまして。飼い猫が凶暴化してとても辛いのでご相談させて下さい。ねこ...2歳、オス、ノルウェージャンフォレストキャット、生後4ヶ月のときペットショップで出会う。飼い主、私...会社員、育休中、仕事時は8〜20時不在、主にお世話担当、現在はほぼ在宅。主人...会社員、7〜21時不在、温厚なタイプ。息子...生後2ヶ月、3週間前に里帰りから自宅へ。

2日前、主人不在時に食事の準備をしていたところ飼い猫が凶暴化しました。息子が泣き出したため後ろに振り返ったところ、私の少し後ろで寛いでいたネコが私の動きに驚いたようで、すごい速さで逃げていきました。その後息子をあやしていたら、机の下にすごい形相をしたネコがおりシャーー!!と威嚇してきました。そして近くを通ろうものなら机の下からなかなかの強さのネコパンチが何発も飛んできてウーーとずっと唸り声もあげていました。こんなことは初めてで瞳孔が開ききったその恐ろしい形相、自分に怒りを向けられていることにかなりショックをうけました。

その後、息子がケガをしたので病院へ出かけ、2時間ほど家をあけました。クールダウンにちょうど良いかなと、恐る恐る帰宅してみると落ち着きを取り戻したようすのネコがいました。ネコの方から近づいてきたので、撫でながら驚かせてごめんね、と伝えました。ところが、その少し後息子がまた泣き出した際に対応していると、また恐ろしい形相をしたネコがシャーー!!と威嚇してきました。今度は私に近づきかなり興奮したようすで追いかけ攻撃をしてきました。慌ててドアの向こうに逃げ、ドアを 閉めました。ドアがガラス張りなのですがドアにすごい勢いでドン!と飛びかかってきてその光景は衝撃的で忘れられません。

その後は主人が帰ってくるまで息子と自室に閉じこもり避難しました。翌日、恐る恐るネコのいるリビングへ出るとネコの方も緊張した様子で私を見ていましたが、何度もネコの方から近づいてきて、足元でごろんと寝転んだり、移動する先へずっとついてきました。自室から出る時はほぼ自室の前でネコが待っている状態でした。とはいえ表情は私の様子を監視しているような顔で、またヘタなことをすると凶暴化しそうな雰囲気があり、とても怖く感じこの日もほぼ自室で過ごしました。

そして慣れない育児疲れも重なりこのネコと一緒に暮らしていくのはもう辛いと思うようになってしまいました... 主人に励まされましたが、またいつ凶暴化するか分からないし、息子に危害が及ぶかもしれないし、ネコを信じることができません。あんなに可愛くてたまらなかったネコが今は恐怖の対象となってしまい、私の心が落ち着く気がしません...

しかし、ネコにはいつも寂しい思いをさせてしまっていると反省しています。夫婦共働きで平日はほとんどお留守番。構ってあげるようにはしてましたが、足りないようで日頃から特に私はよく噛まれてました。脚や腕は傷だらけ、寝てる時も頭を噛まれたり、座っていたら後ろから飛びかかられることもしょっちゅうでした。ただこれは凶暴化しているのではなく、構って!という訴えのような感じでした。そこへ子供が産まれ、3ヶ月里帰りし、帰宅後も同じ空間にいるのに構ってあげられず、ネコが私の気を引こうとしているのはわかっていても手が回りませんでした。

息子の泣き声に怯えているのかとも思いましたが、凶暴化後何度も泣いてますがそこまで反応はありません。主人へは少し甘えん坊になりましたがほぼ普段通りの接し方で、主人曰くネコはずっと怯えているような印象があるとのことでした。そこは私は警戒されていると感じていて、同じように私はネコを警戒しています。今後どのように暮らして、対応していけば良いのでしょうか。現在も引き続き自室にこもり、ネコが近寄ってきたときのみ撫でてあげています。小さい子供がいますので、よっぽど改善しないと前のように可愛がれる自信がありません。結局、何に気をつければ凶暴化しないのかもよく分かりません。長文になり、分かりづらく申し訳ありませんが何かわかることがあればご教示いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。



★★助言内容★★

猫さんと産まれた赤ちゃんとを引き合わせるにあたっては、猫さんが初めて目にするその未知の相手を抵抗なく受け入れ、その後も良好な関係を維持していけるようにするための入念な対策が必要ですが、今回その段取りをあらかじめ施していなかったか手順そのものを誤ってしまったかも知れませんね。もともと環境依存性の極めて強い動物である猫さんにとって赤ちゃんという存在は、極端な言い方をすれば自分のテリトリーにある日突然出現しそのまま居座ってしまった得体の知れない生き物であり、当然強い警戒心や恐怖心を抱かずにはいられない片時も気を抜けない相手にほかなりません。

したがってそれに対して何の手立ても講じずにいると、猫さんの性格によっては赤ちゃんの存在が脅威となり日毎に不安と緊張が高まってきて心身的に強いストレスが生じ、その結果情緒が著しく不安定になることで些細な刺激に対して過剰に反応するようになってしまうことがよくあります。例えば、ある時いきなり赤ちゃんが泣き出したりしたことで驚かされた猫さんが、突然興奮して攻撃的な感情を露わにした行動を示すことは決して珍しくありません。その際に自分を驚かせた当の相手への攻撃がかなわないと、たまたまそばにいたほかの罪のない相手にその攻撃の矛先を向けてしまうといったことがしばしば起こります。赤ちゃんの場合は、泣き出したりすればお母さんがすぐに抱き上げたり常に盾のように傍に付き添っているため、その標的にされる確率は極めて高いということです。

そのような八つ当たり的(攻撃された側からすればとばっちり的)な行動を転嫁性攻撃行動と言いますが、今回のケースは諸々の状況から見てその可能性が高いと思われます。なお転嫁性攻撃行動の場合、一般的には猫さんを驚かせた元の原因が生活環境から排除され当初の興奮が収まれば再発することはありませんが、攻撃行動の誘発原因が赤ちゃんでは取り除くことは不可能なためそれは望めません。しかも環境ストレスにより猫さんが情緒不安定になっていれば、上述したように些細な刺激に晒されただけで攻撃的な興奮状態を招きやすくなるため、赤ちゃん以外にも新たな原因によって想定外の転嫁性攻撃行動が誘発されるリスクが高まります。

なおこの問題に対処するためには、すでに望ましくない行動を学習してしまっている猫さんに対して行動修正を行う必要があり、その中であなたや赤ちゃんに対する望ましい行動を再学習させることになりますが、それには正式にカウンセリングを受けていただき、その上で必要なプログラムを実践していただかなければなりません。もちろん転嫁性攻撃行動以外の可能性も完全には否定はできませんので、適切かつ具体的に対応するためには詳細な問診によって診断を確定する必要があります。改めて当院受診をご検討ください。