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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.64:3歳になった頃から家族を威嚇し咬みつくように。


★★相談内容★★

よろしくお願いいたします。3歳6ヶ月のアメリカンショートヘアーオスです。昨年の12月より突然かまれるようになりました。以降月に1度程度かまれ続けています。噛むときはまず尻尾が膨らみウアーと高く大きな声で鳴いて跳びかかります。未去勢でしたが5月末に去勢しました。これ以降も噛む行為が続き、また噛みそうになることが増えているので、ジルケーンを使用しています。必要量を食べるようになってから約2週間です。

初めてかまれたのは、家族3名で鍋をした後談笑中でした。突然ウワワッツと聞いたこともない声を出して私に飛び掛り腕をかまれました。「やめて!いたい!○○ちゃん!」と叫んで逃げたのですが足もかまれました。静止しようと大声を出した主人も足をかまれました。猫の一番近くで動けずにないていた娘は無事でした。これまでも遊びのときに甘噛みはしていましたが、まったく別物でした。

これ以降1ヶ月おきに噛まれるようになりました。主に私が噛まれます。主人は制止しようとすると噛まれます。娘は噛まれたことがなかったのですが、6月末についに噛まれました。私が噛まれた状況は時系列でゴミ袋を交換しているとき、テレビボードを動かしたとき、猫じゃらしで追いかけっこをしているとき(このときは足をつかんで離さず、振り払ったときに猫の爪がはがれました)、ソファの背もたれを動かした時でした。どれも同様の行為でこれまで噛まれたことはありませんでした。

去勢後の6月、たんすの引き出しを動かしたときにウワーと吠えて私に飛び掛る姿勢を取ったところ、主人が「ダメ!」と言うと主人に飛び掛りました。主人はダンボールで応戦したため猫は部屋の隅に逃げてシャーッとしばらく鳴いていました。この後、猫の尻尾が膨れる回数が増えたようです。ねこじゃらしで遊んでいるとき、そばで立ち上がったとき、出会いがしら、横を歩いたり、帰宅後に臭いをかいだだけで尻尾がふくらむようになりました。

ウワーと吠えた時に動かず視線をはずしていると治まることもあります。6月半ばからは一緒の空間にいることが怖くなり、家族は自室(猫は入れません)で過ごし、猫はリビングや階段その他で過ごすことが増えました。甲高い声にも反応するようなので小声で話し、足はスリッパと布プロテクターをつけています。歩くときはゆっくり静かに、食事はキッチンに間仕切りをして入ってこれないようにして短時間で済ませています。一対一の時に比べて人の人数が増えるとそわそわします。

もともと甘えん坊で、朝はゴロゴロ言いながらなでてほしがります。これは私だけにするようで、今も続いています。あそびは私と主人がおもちゃで応じていました。私の腕にまたがってよく腰をふっていました。家族が閉じこもりがちになってからは、部屋の前で寝そべっていたり、廊下を歩くと前に出て通せんぼのような形で座ったりしています。この春くらいからか、家の周りに野良猫が来ることが増えたように思います。

とりとめもなく書きました。猫が近寄ってくると怖さのあまり動けなくなり、日常生活がままならなくなっています。また娘に害が及ぶようになったことが恐ろしいです。どうかご教示の程よろしくお願いいたします。



★★助言内容★★

ご相談内容からはほぼこれまでに攻撃行動が起きた時の状況しかわからず、判断材料が限られているためあくまでも推測の域を出ませんが、それはそれとして今回のケースには現在3歳6ヶ月という猫さんの年齢が多分に関係しているかもしれません。

というのも猫の場合は一般に生後2〜4年で社会的成熟期を迎えますが、往々にしてそれを機に一緒に生活している飼主や他の猫などに対する猫の見方が変わることで、それまでの双方の関係性が急に変容してしまうようなことが起こり得ます。

それは言ってみれば、猫が大人になりそれまではいわば甘えの対象でしかなかった他者に対して、自らのテリトリー内で同じ環境資源などをシェアする競合相手として認識するようになったりしたことで、時としてその相手に対する今まで見られなかった自己主張的な行動が生じたりするためです。

今回のケースについても、そのような猫がもっぱら自らの優位性などを主張する際に見られる、自己主張性攻撃行動や地位関連性攻撃行動と呼ばるタイプの攻撃行動の可能性が疑われますが、猫さんの競合意識が殊更強ければそれに加えて縄張り性攻撃行動を伴っている可能性も否定できません。

いずれにせよそれらの攻撃行動は、猫が目の前の相手が自分に挑戦してきたとみなすことで引き起こされます。したがって今回のケースがそれであるならば、まずは猫さんが何をもって挑戦されたと感じたのか、あなたやご家族の行動がそれにどう関与しているのかといったことを明らかにする必要がありますが、それを探り出すには猫さんと日常的にどのような関わり方をしているのかが重要な鍵になります。

なお、上述したような攻撃行動の場合はそれが繰り返されることで相手が怯み、それをあたかも自分が服従させたかのように猫さんが学習してしまうと、その優位性や様々な状況をコントロールしようとする支配性がさらに強まってしまい、その意に反した行動をとった相手に対する攻撃行動が激化する恐れがあります。

とりあえずは、余計な刺激を与えないため猫さんを隔離したり、それをしないまでも接触を必要最小限にとどめる今のような対応の仕方は、攻撃行動の種類を問わず真っ先にとるべき緊急避難措置としては問題ありませんが、それを続けていても攻撃行動の種類と原因を特定しそれに合った適切な対策を講じないかぎり抜本的な改善は望めません。

今回のケースは状況だけで判断すると上述したような可能性が考えられますが、それでほかの攻撃行動の可能性が否定されたわけではありません。それらを鑑別して診断を確定するとともに、猫さんに適切な行動治療をおこなって事態を改善するためには、詳細な問診を含めたカウンセリングが必要になります。改めて正式な受診をご検討ください。