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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.81:引越し後に飼い主を威嚇し始めた高齢猫


★★相談内容★★

昨日から家の猫(16才)が突然凶暴化してしまって、ものすごい叫び声みたいな声で私や妻を威嚇してくるようになってしまいました。ひっかかれたり噛みつかれてはまだいないのですが、少しでも近づこうものなら攻撃してきそうです。猫は家のリビングにいるので、この状態では生活もままならず、昨夜はとりあえずそっとしておこうと思い、妻の実家に避難してきた状況です。

一ヶ月ほど前に引っ越しをして、色んな人の出入りもあったり近所の野良猫が窓から見えたりしてストレスが爆発したのかもしれませんが、この様なことは今までで初めてで…。妻も妊娠してお腹も大きいので心配ですし、どうしたらいいか分からなくて困り果てています。何かアドバイスいただけると幸いです。よろしくお願いします。



★★助言内容★★

突然威嚇が始まったという現象だけでは、その原因や動機が何なのか探りようがないのですが、ほかに唯一記されている1ヶ月ほど前に引越しをされたことや、その際に多くの人の出入りがあったこと、更にはその後に窓から野良猫を見たという情報を手掛かりに、とりあえず今回の猫さんの威嚇の原因を考えてみました。

一般に引越しは猫にとりわけ強い環境ストレスを生じさせますが、高齢になるほど環境への順応性が低下するためそのダメージは大きくなります。しかもただでさえそのような不安な状況に置かれているのに、そこに見知らぬ人が頻繁に出入りすれば不安は増大し精神的な緊張状態に一層拍車がかかることになります。

それにより情緒不安定な状況に陥ってしまうとちょっとしたことがきっかけとなり、それが刺激となって情動的な反応を引き起こし易くなります。今回はそのような背景のもとで外の野良猫が刺激となり、猫さんの攻撃的な情動反応が誘発されてしまったのかも知れません。

その結果、攻撃的にはなったものの怒りを直接当の相手にぶつけられないことで、八つ当たり的にその矛先がご夫妻に向けられてしまったのではないかという訳です。そのように本来の相手への攻撃が無関係な相手に転嫁されたものを転嫁性攻撃行動と言いますが、今回のケースは一応それを疑ってみました。

なお、そうであれば最初に猫さんを攻撃的にさせた刺激に再び晒されるのを防ぐ必要がありますので、念のため外の野良猫が見えないように窓に目張りをするといった対策を講じるとともに、餌とトイレを置いた静かな部屋に猫さんを隔離し無用な刺激を与えないため当面は一切交流しないようにします。

今回のケースが転嫁性攻撃行動であるならばそれをすることで次第に猫さんの興奮が収まり、普通はそれに伴ってご夫婦への威嚇といった行動も起こらなくなるはずです。とは言え環境になかなか順応出来ずストレスが続いているようですと、若干時間がかかるかも知れません。

ただしそれをしていても事態が一向に改善されないようですと、猫さんの威嚇についてはほかの原因による攻撃行動を疑うことになりますが、年齢を考えると認知機能障害からくる不安障害などの鑑別も必要になりますので、その場合は改めて正式な受診をご検討ください。