2012年生まれのロシアンブルー(女の子)なのですが…ペットショップで購入しました。普段は母が餌やりやトイレの掃除をしてくれています。元々、気性が荒かったのですが、一ヶ月くらい前に私が物を落としてしまい大きな音をたててしまった際にビックリして走っていき、玄関にあった衝立を倒してしまいました。下敷きになったのかと思い、母が「大丈夫?」と声を掛けるとウゥーっと唸り、近づこうとすると攻撃しようとしてきました。それからなるべく刺激しないようにしばらく話しかけなかったのですが、2日後ぐらいに自分から寄ってきてスリスリしてきたので大好物のチューるを与えました。でも、また近くを通ったりするとすごい声で威嚇しながら攻撃してきました。最近はこの繰り返しです。車椅子の父には攻撃はしてきません。
数日前、夕方に母が足を引っ掻かれてしまったので子猫の時のゲージがあったので入れてみました。狭いせいなのかその中では餌も食べずトイレもしないでずっとニャーニャー鳴きながらウロウロしていました。そのまま夜、寝ようとしたら歯でゲージをガタガタしてうるさかったので出したら静かな場所へ行き寝ていたようです。落ち着いたかのようにみえるのですが、今日もまた母が近づいた際にすごい声を出 しながら引っ掻いて怪我をさせました。広い家ではないので私達の生活の中で部屋の移動が困難だったり不自由で仕方ありません。
買ってきて半年後ぐらいに避妊手術をしてもらったのですが、その時から病院嫌いになってしまい、ワクチンに連れていく度にひどくなっていったので、ここ2、3年はワクチンも打てていません。色々、調べていると病院で安定剤をもらえるとか書いてありますが連れていくことができないし、ゲージにもうるさくて入れておけないしで本当に困っています。どうしたらいいでしょうか?
猫さんに最初の攻撃行動が起こったそもそものきっかけは、確かにあなたが物を落として大きな音を立ててしまったり、衝立が倒れてきたりしたことであることは間違いないでしょう。一般にこのようなケースで見られる攻撃行動の多くは、転嫁性攻撃行動と言って何かに驚かされ興奮して攻撃的になってしまった猫が、その矛先をたまたま側に居合わせた無関係な相手に向けてしまうものです。
したがって転嫁性攻撃行動において攻撃対象となるのは、衝動的にその標的にされてしまった無差別の相手であり、はじめから特定の相手を狙って意図的に攻撃するものではありません。しかしながら今回のケースでは、その後もあなたとお母さんに対しては繰り返し攻撃しているにもかかわらず、お父さんはその攻撃対象から外しているように見える猫さんの行動は、転嫁性攻撃行動の本来の特徴とは異なり多分に意図的なものが感じられます。
もっとも、お父さん以外は度々攻撃されたことで攻撃対象として条件づけられてしまっている可能性を否定できませんが、それを割り引いてみたとしてもやはり猫さんの場合は、上述したような転嫁性攻撃行動ではなくそれとは異なるタイプの攻撃行動であるように思えます。もちろん、猫さんの生活環境をはじめご家族との関係性やその交流方法もわかりませんので確証を得ているわけではありませんが。
なお転嫁性攻撃行動の場合は、最初に猫さんを攻撃的にさせた刺激に再び曝されないようにするとともに、それ以外にも無用な刺激を避けるため接触を制限したりすることで、その間に猫さんの興奮が鎮まれば攻撃行動は自ずと終息します。しかし、ほかのタイプの攻撃行動ではそのような対応では不十分であったり対応すらとれないこともあり、その場合はそれぞれの原因に応じた対処法が求められます。
そこで原因が分からないままケージに閉じ込めたり精神安定剤を使用するのは、あくまでも緊急避難のための一時的な措置でしかなくそれだけで問題を改善することはできません。それは言ってみれば単に臭いものに蓋をしただけのことであって、何ら抜本的な解決策にはなり得ないからです。
相談にある仔猫の時のケージ云々といった記載内容からは仔猫時代の生活環境が垣間見れますが、それが猫さんの性格形成に影響を及ぼした可能性も含め今回の攻撃行動には複雑な背景がありそうです。何はともあれ、原因を明らかにして診断を確定しない限り先へは進めません。行動診療は在宅のままでカウンセリングも治療も受けられますので、これ以上状況が悪化する前にまずは受診してみてください。