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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.91:家族全員の足を狙って攻撃してくる


★★相談内容★★

はじめまして。猫の凶暴化について相談させて下さい。ラグドール去勢済み2歳11ヵ月。家族構成は父、母、私の3人で、世話をしているのは私です。攻撃対象はいつも足(スリッパ、靴、素足など関係なく)です。最初の凶暴化が見られたのは2歳の頃でした(前の日に動物病院で健康診断を受けたのでそのストレスが関係しているかもしれません)。

玄関の靴箱の上からガラス越しに外猫と目が合い、うちの猫が靴箱から土間に降りたときに母が居合わせてしまい、母の足に威嚇し襲いかかりました。その後にスリッパを履いて玄関に来た父も足を攻撃され、帰宅した私の足にも威嚇をしてきたので、猫を2階に誘導し落ち着くまで数日間は私と一緒に過ごしました。

その後もときどき土間で足を見ては何度か威嚇や前足で攻撃してきましたが、落ち着く時間も短いし、頻度も減ってきていたので、外猫を見せなければそのうち無くなるだろうと考えていました。先週は私が振り返ったときに猫の足に軽くあたってしまったのか、ビックリした猫が威嚇攻撃をしてきたり、庭から戻ってきた母の足を攻撃しようとしたり(外猫のニオイがついてたのでしょうか?)しています。

臆病な猫なので今まで転嫁性攻撃と思っていましたが、こちらの無料相談を拝見しまして、甘やかして育てた自覚もあり、自己主張性の攻撃行動ではないかと思い始めています。(私のあとを付いて回る傾向にあること、私または家族が外出したら何回か悲しい声で鳴き分離不安の気があること、病院に連れていく・抱っこしようとする・前足を触るなど気に入らないことをすると軽く噛み付いてくること等)

1階リビングの窓際にキャットタワーを置いてなるべく足と同じ目線にならないようにしてみようか、いつも足を攻撃してくるので、足の甲に餌を載せて足は怖くないということを伝えようか、庭から戻ってきたときに猫が威嚇せず大人しくしていたらご褒美をあげようか、と今は考えがぐるぐる巡っています。素人考えでこれらのことを行って良いものなのか、よろしければアドバイス頂けたらと思います。お忙しいところにすみません、宜しくお願いいたします。



★★助言内容★★

状況だけを見ると、確かに猫さんの最初の凶暴化は転嫁性攻撃行動が原因であるように思えます。前日の健康診断の影響もあって興奮状態が続いているような状況で、ガラス越しに見えた外猫が刺激となって攻撃的な行動反応が起きてしまった際に、本来の攻撃対象ではない偶然その場に居合わせただけの相手にそれが転嫁されてしまったというようなパターンですね。

そのような場合、最初に猫さんに攻撃的な行動反応を起こさせた一次刺激はあくまでも外猫の存在ですが、その攻撃の矛先がお母さんに向けられ更にはそれがお父さんやあなたにまで向けられた際、どの場合も場所が同じ玄関の土間であったことや攻撃したのがいずれも目の前にあった足であったことなどが学習され、その結果猫さんの中でそれらが条件づけられてしまった可能性を否定できません。

そうなってしまうと必ずしも外猫という一次刺激がなくても玄関の土間と足といった条件が揃えば、それが刺激となって攻撃的な行動反応が誘発されるようになったりします。更にそれを繰り返すことで反応がどんどん強まってゆく感作といった状態に陥ってしまうと、刺激の一般化が起こって玄関の土間だけでなく時と場所を問わず攻撃されるようになったり、攻撃される箇所も足だけにとどまらなくなる恐れがあるので注意が必要です。ただし、現在の猫さんの行動がそのようなタイプのものであると断定はできないので取り越し苦労かも知れません。

それ以外では相談内容でも触れておられる自己主張性の攻撃行動ですが、確かに優位性(地位関連性)攻撃行動のような自己主張が根底にある攻撃行動の場合、今回のような足への攻撃が日常化しているケースは多く見られます。それは優位性を主張する猫においては、その場の状況を支配したいという欲求が人一倍強いため、飼い主の動線までコントロールしようとして勝手に歩こうとすると足に噛みついたりするからです。

そのような猫は、飼い主を自分の意のままに操るには常にその動静を監視する必要があるため、いつも側につきまとい行く先々について回るといった傾向が見られます。猫さんの日常行動にもそのような特徴が表れているようですので、いまだに時として見られる威嚇や足への攻撃などは、あなたが疑っておられるような優位性攻撃行動によるものかも知れません。

なお同じ攻撃行動であっても先に述べたタイプの攻撃行動と後で述べた攻撃行動では、その対処の仕方が違ってくるためある程度確証が得られないと適切な対応策などは明示出来ません。とは言えいずれの場合であっても、猫さんに対し無用な刺激を与えないようにしなければいけないということだけは言えます。したがって、既に攻撃対象になってしまっている足に猫さんがいきなり遭遇するような状況を回避する努力は良しとしても、逆にそれに餌を載せて目の前に差し出すなどは論外です。

ただし、猫さんが威嚇せずにおとなしくしていられた時におやつを与えるといった方法については、おやつが飼い主を威嚇しないという望ましい行動に対してのご褒美すなわち強化因子となり、それを繰り返すことで望ましい行動がますます強化されるようになるため、どのような攻撃行動にも適用できる行動修正法ですので実施することに何ら問題はありません。



★★相談内容★★

お忙しい中、相談に乗って頂き本当にありがとうございました。逆条件付けというのでしょうか、1週間ほどご褒美をあげながら猫の様子を見ています。また問題が起きましたらカウンセリングを受けたいと考えておりますので、その時はどうぞよろしくお願いします。