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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.99:保護した野良猫が外に出たがって鳴き続ける


★★相談内容★★

2週間前に保護し、避妊手術をした推定1歳〜2歳の野良猫について。仕事場の裏のゴミの溜まった繁華街の路地で生活していた野良猫で去年出産経験もあります。ガリガリに痩せ細っていた為、ご飯をあげるようになり、程よく体格もしっかりとしてきたので、捕獲し避妊手術をしました。

慣れてたので、このまま自宅に連れて帰り現在2週間経ちますが、一日中窓やベランダの隙間を探して外に出たいと鳴いてウロウロします。夜中が特にひどく朝まで泣き続けます。慣れているという軽率な考えで自宅に連れて帰りましたが、睡眠不足が続きこれから先の事を考えると不安要素がいっぱいです。

再び元いる場所に戻した方がこの子には幸せなのか、よくわからなくなってしまってます。不衛生な環境でうるさい駅前だけど、仲間もいました。この子だけ私に懐き顔を見たら走ってきました。

この猫ちゃんも精神的に不安定になってると思います。鳴く行為だけでも少しでもマシにしたいのですがいいアドバイスやサプリメント等なんでもいいので教えて頂けたらありがたいです。今回私の軽率な行動での相談で反省しております。



★★助言内容★★

猫さんが人馴れしていてあなたに懐いていたのは、元々そういう穏やかな気質や人間に対する社会性が十分に備わった個体であったことに加え、何らかの理由であなたにとりわけ愛着を持つようになったからなのでしょうね。そのような、野良猫でありながら人間に対する警戒心がそれほど強くない今回の猫さんのような個体の場合は、以前は飼い猫であったかあるいは元は飼い猫であった猫から産まれた可能性が高いと思います。

ただしそうなった理由はともあれ、野良猫生活を続けてゆく中で猫さんがそういった環境に十分に適応していたであろうと思われるのは、これまでずっと繁華街の路地裏に定住しそこで出産までしていることです。そのことはすでにその場所に猫さんの定住生活を支える生活圏や縄張りや住処が構築されていたことを意味します。すなわちそこでは、少なくとも猫さんが生きてゆくために必要となる生活資源や環境資源などが最低限確保できていたということです。

そのような屋外の生活環境に適応して野良猫として自由生活をしている猫の中には、先に述べたようなこともあり今回の猫さんのように人間に対して懐っこい態度をとるものもいますので、ついそれにほだされて保護したりすると今回のような思わぬ落とし穴が待ち構えていることがあります。それも仕方がないことで、当の猫にしてみればある日突然生活拠点から有無を言わさず引き離されるという状況は、いきなり身ぐるみ剥がされ拉致監禁されたような一大事ですから。

猫さんが隙あらば外へ逃げようと出口を探し一日中鳴きながらウロウロと動き回ったり、一晩中鳴き続けたりしているのも知らない場所に拘束されたことによって生じた拘禁ストレスによる行動です。ただそれも極端な怖がりでもなくしかも若い猫であったりすれば一般には時間の経過とともに弱まり徐々に新しい環境に順応しますが、その間は今のような行動がしばらく続くことになりますのでそれにはあなたが耐えられそうもないということですね。

それでもそうなる前に何かできることがあればしてみたいということでしたらば、猫さんの気を紛らわせることができそうな様々なおもちゃを用意し、それにまたたびやキャットニップで匂いづけしたものを使って取っ替え引っ替え遊びに誘ってみるのもいいでしょう。その際猫さんが少しでもそちらに興味を示してウロウロしたり鳴くのをやめたならば、すぐにご褒美として喜んで食べるようなおやつなどを与えます。それをしていない時でも猫さんが同じようにウロウロしたり鳴くのをやめた時は、その望ましい行動に対して同じようにご褒美を与えるようにします。

なお遊びに誘っても乗ってこないような場合は、猫さんが抱いていると思われる不安や恐怖による情動反応を抑えて精神的な緊張を緩和するために抗不安薬の服用が有効となる場合があります。使ってみたいということであれば動物病院で処方してもらえますので相談してみてはいかがですか。なお慢性的なストレス環境で用いる緊張緩和に有効なサプリメントもありますが、あくまでも補助食品という本来の用途からして即効性は期待できません。

以上のようなことを試してみても効果が期待できないようであれば、残念ながら猫さんは元の場所に戻して地域猫として生きてゆくのを見守ってやるしかないと思います。