初めまして。 飼い猫の行動に困り果てています。何かヒントをいただきたく ご相談させていただきます。よろしくお願いいたします。内容は、凶暴化と言われるものです。人間へ攻撃、部屋に血が飛ぶほどで、母は入院、私も2度噛まれ、私は猫アレルギーが判明した為 放し飼いが怖く、ケージの中でご飯だけをあげるような共存の仕方をしています。病院で、一時的に落ち着く薬をもらい、ご飯に混ぜたりしていますが、一時的でもあまり効果があるとは思いません。
経緯は、約2年前マンションのメンテナンスの為、1ヶ月ほどの間 業者がベランダ等出入りしていた時からでした。その間に何があったのか、全くわかりません。部屋の中に人が入る事はなく、お留守番の間に何か嫌なものを見たのかと思っています。それより以前は何もなく、平穏に暮らしていましたが、ある日夜にカーテンを閉めようとすると怒り出し、足に噛み付いてきました。しばらく、人間が少しでも動くと 物凄い声で怒り、襲ってきました。最初は 消したテレビやガラスにうつる自分の姿をみたり、足や、ズボンの裾に怒っているようでした。その後は、手を伸ばすと 怒り狂い、やはり昼でも夜でも窓辺に近付くと襲ってきました。
ケージ飼いになってから、元の生活に戻れればと リードをつけて部屋を歩かせてみた時も 襲ってきました。気に入らない部屋?に人が入ると怒る、ということもあります。怒っても、どうにか後ろから隙を見て 毛布で捕まえて 体に触れると 怒りはマシになったように思っていたので、時々爪を切ったりしていました。ですが、最後に爪を切った時は、爪を切っている時に私に襲いかかりました。猫も、怒ると尿と糞を出して私達を攻撃します。とても怖いのだと思います。
何に怖がっているのか、どうすれば恐怖を取り除いてあげられるのでしょ うか。ケージのまま共存していくのは悲しく、以前のように暮らしたいです。また、凶暴化した猫でも、「複数の猫と過ごすと気持ちが落ち着く」と聞いたことがあり、猫の病院のような施設があるのかも聞きたいです。無料相談の範囲外の話をしていたらすみません。電話での診療を受けたいと思っていますが 私が今猫と離れて住んでいて(半年前に上京)すぐに診療が受けられる状況になく、とにかくこの件と向き合ってくださる病院を探している現状です。(ほかの病院では、この内容は 対応できないと思うがとりあえず連れてきて下さいと言われます)何卒、よろしくお願い致します。
猫さんが凶暴化したそもそものきっかけは、マンションのメンテナンス作業のため業者がベランダなどに出入りするようになり、間近にその姿を目にしたり工事の音などに驚かされたりしたことが原因であると考えてほぼ間違いないでしょう。猫さんからすれば、それまで安心だったはずの自分の生活圏内にある日突然出現した見知らぬ人間におののき、それがもたらした工事の騒音などにより身の安全が脅かされたと感じたならば、防衛本能により相手を排除しようとする攻撃的な情動が生じたとしても不思議ではありません。
さらには、猫さんがそのような体験を学習したことで窓際など特定の場所と恐怖感や不快感などが条件づけられてしまっていると、工事が終了して実際の脅威がなくなってもその場所が刺激となり、些細なことにも反応して簡単に攻撃性を伴う興奮状態が惹起されてしまう危険性があります。それと今回問題となるのは、そういった状況で興奮状態になってしまったと思われる猫さんが、当初自分に脅威を与えた工事業者とはまったく無関係で本来の攻撃対象ではない、たまたまその場に居合わせただけの家人に対して唐突に激しい攻撃を加えてしまったということです。
これは猫さんが特定の対象を攻撃しようとしたのにその相手が見つからなかったために、身近な第三者に対して八つ当たり的にその怒りの矛先を向けてしまった、いわゆる転嫁性攻撃行動の可能性が高いと思われます。攻撃された側からすればいわば巻き添えを食ったようなものです。この転嫁性攻撃行動の場合、猫さんの高揚状態が続いている間はそのとばっちりを受けて誰彼を問わず繰り返し攻撃されることがありますが、その後当初の興奮が収まり落ち着きを取り戻せば攻撃行動自体も収まるのが普通で、それが後を引くことはまずありません。
しかし今回のケースでは、上述したように恐怖体験などと結びついてしまった特定の場所の存在が示唆され、それが刺激となって猫さんに攻撃的な情動を生じさせるような反応が起きてしまっている可能性が大です。したがって今後もその場所が存在する限り、それが火種となって転嫁性攻撃行動が引き起こされる恐れは多分にあります。現在はケージ内に隔離しているということですが、猫が凶暴化した際にはその原因にかかわらずまずは攻撃を回避することが鉄則であるため、緊急措置としては最善の方法です。ただし問題がなんら改善されないままずっとそれを続けるとなれば、猫さんにとっては長期の拘束であり最悪の環境と言わざるを得ません。
一般に今回のようなケースではこのまま放っておいてもまず事態の改善は望めず、したがっていつまでもケージから出せないといった状況に陥りかねません。それを避けるためには、猫さんに対する脱感作療法などを用いた行動治療が不可欠かと思われますのでご検討ください。なお当院の診療では、甲状腺機能亢進症や何らかの痛みを伴う疾患など、時に攻撃行動の原因となり得る身体的疾患が疑われない限り猫さんを直接診察することはありません。あらかじめかかりつけ医などによってそれらが除外されていれば同行の必要はなく、診療は飼い主さんへのカウンセリングが中心となります。